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とりつく島がない。でも、しかたない。
あたしは雲雀さんにとりあえず謝れただけでもよかったと、あきらめて芙蓉さんの傍に行った。
この家の秘密の片鱗が写っているポラロイドは、雲雀さんに渡したままにすることにした。
あたしが失くしたってことにして、堀田さんに謝ればいい。
牧園家に対する、あたしからのせめてものお詫びだ。
「行きましょう」
あたしは、芙蓉さんの腕を握る。
爽希さんは、あたしたちを見たくないのだろう。
用事は済んだとばかり、さっさと背を向け、螺旋階段を登り始めた。
その冷たい態度が、余計に刺激したのかもしれない。
「なによ、ちょっと、離してよ」
芙蓉さんの声が、一オクターヴ高くなった。
「爽希さんも、関わりは持たないと言ってるじゃないですか。もうあきらめたほうが、お互いのためじゃないんですか」
「あんたになにがわかるのよ!」
そう叫ぶと、芙蓉さんはあたしの手を振り払い、螺旋階段に走り寄った。
「ちょ、ちょっと、待って……!」
あたしは慌ててついていくしかない。
でも追いついたときには、芙蓉さんはとっくに階段を駆け上がっていた。
あまりの勢いに、爽希さんは足を止め、振り返る。
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