32. 螺旋邸ふたたび 5

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 そして、そこを逃す芙蓉さんじゃなかった。  両手を伸ばし、爽希さんの胴にしがみつき、金切り声を上げる。 「返せ、大基を返せ!」  そう叫びながら、爽希さんの身体を這い上るように腕を動かし、気がつくと両手で首を絞めるような状態になっていた。 「あぶっ、危ないですよっ……!」  あたしはその芙蓉さんに抱きつき、引きはがそうとする。  三人でもみ合っているうちに、視界の端にふと、階段の下に来ている雲雀さんが見えた。 「雲雀さん、どいていたほうが……」  注意を呼びかけるが、雲雀さんは反応せず、ただただ目を見開くだけだ。  あたしはそれに気を取られ、一瞬、揉み合うふたりから離れた。  そのときだ。 ----カチッ。  そんな音が、聞こえた気がした。
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