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そして、そこを逃す芙蓉さんじゃなかった。
両手を伸ばし、爽希さんの胴にしがみつき、金切り声を上げる。
「返せ、大基を返せ!」
そう叫びながら、爽希さんの身体を這い上るように腕を動かし、気がつくと両手で首を絞めるような状態になっていた。
「あぶっ、危ないですよっ……!」
あたしはその芙蓉さんに抱きつき、引きはがそうとする。
三人でもみ合っているうちに、視界の端にふと、階段の下に来ている雲雀さんが見えた。
「雲雀さん、どいていたほうが……」
注意を呼びかけるが、雲雀さんは反応せず、ただただ目を見開くだけだ。
あたしはそれに気を取られ、一瞬、揉み合うふたりから離れた。
そのときだ。
----カチッ。
そんな音が、聞こえた気がした。
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