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「あっ」
雲雀さんが叫び、一瞬で、その顔は恐怖に歪んだ。
その視線の先に目をやろうと、あたしは上に向き直った。
「えっ」
一瞬、目の前の光景が、理解できない。
爽希さんが、段の上に寝そべるような姿勢になっていた。
その首には相変わらず両手がかかったままだったけど、芙蓉さんの身体じたいは、宙にぶら下がっている。
(ぶら下がっている!?)
あたしは頭のなかで目の前の情景を、思わず復唱してしまった。
それぐらい、予想していなかったことが起きていたからだ。
よく見ると、手すりの一部分が、なくなっている。
そもそも手すりじたい、前に昇ったときに、やけに低いな、と思ったのは覚えている。
だから、人が落ちることもあるかもしれない、とそう思った。
おそらく、大基さんとやらも、それで落ちたにだろうと。
でも、今、目の前で起こっていることは、それと違う。
明らかに、
意図的に、
人を、落とそうとしている。
そのためのからくりが、やっぱり存在してたんだ。
(爽希さんはそれを作動させた!?)
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