34. あの日のこと 1

3/4

16人が本棚に入れています
本棚に追加
/189ページ
 この家で過ごしているうちに、住人たちの性格や行動原理といったものを、多少なりとも理解できたと思っていた。  でも、違うんだ。 (そんなの、ただのあたしの思い込みだった)  そう思うのは、なんだかとても胸が締めつけられた。  ただ、そんな風にあたしがショックを受けているあいだに、芙蓉さんは逆に元気を取り戻したらしい。  爽希さんに勢いよく掴みかかった。 「これ!? これ、やったのね!? 大基が落ちたのは、これのせいなんでしょ!?」  爽希さんはというと、臆するそぶりなどみじんもなく、芙蓉さんをしっかりと見つめ返した。 「後悔はしてません」  この答に、芙蓉さんは絶句する。  あたしも、驚いた。 「なに言ってんの!!」  なんとか気を取り直し、かろうじて発した疑問は、理解できないことを言われたせいか、金切り声だ。 「なにが起こったか、教えましょうか」  爽希さんは、冷静に……、というか、かなり冷たい声に、表情だ。  とても、罪を糾弾されている立場の人間の感じじゃない。  まるで、自分の信念の話をしている人のよう。  ただ、やけくそになってる雰囲気も、すこし混じってる気もする。 (もしかしたら、本当はずっと、一切合切ぶちまけたかったのかもしれないなあ)  あたしはなんだかそう思った。
/189ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加