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「雲雀はねえ、十五歳でした」
爽希さんは、懐かしむように目を細めた。
「進学する高校も決まっていて、将来は大学に進み、経営を学ぶと、夢を語ってくれてました。僕の仕事を手伝ってくれるって」
(ああ、そんなことがあったんだ)
今でも、その夢は捨ててないんだ。
だから、独学でべんきょうを続けてたんだ。
「まだまだ子供みたいで、オシャレや恋愛の話なんかも、ためらいながらも好奇心を隠せない、そんな年頃でした」
ここで、爽希さんの表情が歪む。
「その雲雀に向かって、あの男がなんて言ってたと思います?」
「な、なによ……」
迫力に、芙蓉さんは心なし身を引きながら、なんとか言葉を返す。
「『卒業祝いだ』。そう、言ってましたよ。『卒業祝いに、女にしてやる』。『股が緩い女の産んだ娘に、ふさわしいプレゼントだろ、感謝しろ』って」
(はああああ!?)
ただ聞いているだけで、あたしは怒りで歯ぎしりをしてしまった。
(なんだ、その論理)
「なんでもこの家の権利書が、階段の上の部屋にあると知って、最初は雲雀に案内させようと脅したそうです。それを拒絶しているうちに、そんな態度に出たと」
ここで突然、爽希さんは乾いた笑いをたてた。
正直、ぞっとくる笑い方だった。
「あの子は、制服のまま、階段でレイプされてました。母親違いとはいえ、実の兄に。僕は彼女を助けたかった。そのために、あの男を落とすために、からくりを作動させた……」
そう話す爽希さんの顔は、妙に美しかった。
造形の美しさじゃない。
覚悟を決めた人間の、欲も自衛もなにもかもを削ぎ落としたゆえの、美しさ。
見とれてはいけない。
それでも、惹きつけられずにいられない。
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