4. 聞いてない

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 あたしは家に帰るとすぐに、堀田さんに電話した。 「どういうことですか。死人が出てるって言われましたよ」 『あー、バレちゃったか』  堀田さんはあっさり認めた。 (いや、その態度は、軽すぎるでしょ)  そう思ったが、とりあえず、まずは言い分を聞いてみることにする。 『死人っていったって、事故死って話なんだよ』 「はい」 『だから、それ自体に事件性はないと思うんだけどさ。警察が出した結論だし』 「ああ、警察もちょっと疑ったってわけですね」 『うん。というのもさ……』  堀田さんは声を潜めた。 『いわゆる、お家騒動? みたいなのが、あるらしいんだよ』 「お家騒動ですか? 今どき?」 『いやいや。今だっていくらでもあるって。なんかそこの兄妹、とある地方名士の愛人の子だって噂があるんだよ。だから、そこらへんを探ってきたら、面白いんじゃないかって』 「めっちゃプライバシー侵害じゃないですか」 『いやさー、正直、記事になるかどうかは微妙だとは思うわ。でもまあ、棗も事件記者目指すなら、そういうドロドロしたの、生で見たほうがいい経験になるって。今の時代はそういうの受けるし。金も稼げるし一石二鳥だろ』 「はあ……」 『そもそも、あれ、留見子さんの有名スクープの、佐藤議員汚職問題、あるだろ』  留見子、というのは、あたしの母の名前だ。  佐藤議員汚職問題というのは、母の名前を一気に世に知らしめた一大スクープだった。 『あれだって、最初は選挙事務所の事務員のセクハラ話を聞きに行ったところから始まったからな。たとえ下っ端でも、ただ身近にいるだけの人間でも、どれだけ豊かな情報を受け取ってるか、ってののいい例だったわけだ』 (うまく行けば、それを狙えるかも、ってことか)
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