37. 『家族』

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 結局、正嗣くんについてのことが、芙蓉さんを説き伏せる決定打になったようだった。  なんのことはない、愛人だのなんだの言って難癖つけてた張本人が、不倫の子を産んでたというわけだ。  そこを追及されたら、今の立場すら怪しくなりかねないことは、自身が一番よくわかっていたんだろう。 (しかしまあ、そんな環境で、よく正嗣くんがあんなにまともに育ったものだ)  かえって感心してしまった。  たしか大基さんばっかりにかまけて、あまり愛情を注いでくれなかったと言ってたから、それがよかったのかもしれない。 (すっごい皮肉な話だけど)  そして、あたしはと言えば。  大胆にも、申し出てしまった。 「あたしも雲雀さんに協力します。させてください。小さな町工場だったとはいえ、経理関係の仕事の経験もあるので、お手伝いできることもあると思います」 「しかし……」  爽希さんは迷う表情になった。  なんでなのかは、あたしだってわかる。 「堀田さんたちとは、これっきり、縁を切ります。今さら信用してくれ、と言うのも図々しいかもしれませんが」 「いや、そっちじゃなくて……。あ、ああ、でも、そっちもですけど」  爽希さんが言いよどむ。ちょっと、らしくない。  一見冷静に見えるけど、実はそれくらい、混乱しているみたいだ。 「いいんですか。犯罪者の出る家に関わるなんて」 (そんなこと、どうだっていい)  さすがに口には出せなかったが、それが、実はあたしの本音だった。
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