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そんな頃、あるひさしぶりの休みの日のことだった。
あたしは重要な契約書をしまいに、螺旋階段の上の部屋へと入った。
今のところはここへの用事はあたしがやっているけど、もうすこししたら、エレベーターを設置しようという話になっている。
そうすれば、雲雀さんも出入りできるし、あたしだって楽だ。
降りる途中、あたしは好奇心にかられて、例のからくりを改めて見てみることにした。
実は、これをなくす話も一度は出た。
でも、よくよく考えたら、たしかに防犯上の役に立つことはありそうだという結論になり、そのままにしておくことにした。
ちなみに集音管は、詰め物をして音が聞こえないように応急処置をしてある。
仕掛けを作動させるやり方も、前は爽希さんしか知らなかったけど、今はこの家に住む三人全員が教えてもらっている。
ただ、実際にやってみたことはないので、一度実践してみようと思った。
自分が落ちたらシャレにならないので立ち位置に気をつけながら、まず、手すりの裏側の板を上方にずらす。
見た目ではわからないようになってるけど、この部分だけ寄木細工になってるのだ。
そうすると、露出した部分に、木の筒状になったものの一部が現れる。
これを回すと、空洞が出てくる。
そこには、短い縄の端があって、それを思い切り引くと、階段一段ぶんの手すりと支柱が、一気に外れる仕組みになっているのだ。
ただ……。
実際にやってみて、あたしは疑問を感じる。
(これ、とっさに駆けつけた人間が、すぐにはずせる作りじゃない気が……)
あたしは、このあいだと同じように、空いた隙間から下を覗き込んだ。
そこに、また、雲雀さんがいつの間にかいて、こちらを見上げている。
正直、ギョッとした。
だって……。
「わかった、のね」
雲雀さんの、低い声。
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