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運転手の若い男性は、真面目そうな雰囲気で、井沢孝則と名乗った。年齢は二十五歳だという。
二年ほど前から勤めているそうで、牧園さんの送り迎えと仕事の移動を主にやっているけど、都合がつけば、たまに家族の送り迎えを頼まれることもあるということだった。
ちなみに、やはり住み込みらしい。
ただ、なにかあったらすぐに車を出せるように、ガレージの隣にある部屋に住んでいて、あたしが棲むようになるのとは別の建物で生活してるんだという。
(っていうか、使用人用の建物が、別にあるような家なのね)
あたしはちょっと感嘆した。
しかし、相手のペースにばかりハマってもいられない。あたしは、思い切って単刀直入に訊いてみた。
「お嬢さんって、どんな方ですか」
ぶしつけだとは思う。
だいたい、初対面の相手に雇い主の悪い面をすぐに言ったりはさすがにしないだろうけど、なんというか、言葉ではなく反応で、どんな人柄なのかを推測することはできる。
井沢さんは、ルームミラー越しにちらっとこちらを見えた。
隠し事をしている、というよりは、こちらの意図を読もうとしているような感じがした。
「雲雀さんですね。ちょっと気難しいところもありますが、いい方ですよ」
まあ、無難といえば無難な答だ。
ただ、牧園さんも『気難しい』というようなことは言ってた気がするので、どうやらそこは本当のようだ。
(さてさて、どうなることやら)
あたしは早くも、先行きの不安定さを心配するしかなかった。
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