5. 新天地

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 車はやがて、手入れの行き届いた植え込みに囲まれた家の裏手へと回った。  大きなシャッターがまず目につく。たぶんこれがガレージなんだろう。その右脇に、小さなドアがある。  井沢さんはその前にあたしを降ろすと、自分もいったん降りて、インターホンを押す。勝手口のようだ。  返事があり、すぐにエプロンをした中年の女性が姿を現した。 「じゃあ、あとはお任せします。では」  井沢さんは荷物を降ろしたあと、ぺこりと頭を下げると、また車に乗りこんだ。  ガレージに入れるのかと思ったら、向きを変える。  どうやら、このまままた牧園さんのところに戻るみたいだ。  あたしはわざわざ来てくれたお礼を言いたかったんだけど、井沢さんの運転技術があまりに素晴らしすぎるのか、車はあっという間に来た道を引き返して、すぐに見えなくなってしまった。 「いらっしゃい。あなたが沖津さんね」  中年の女性が、背を向けていたあたしに声をかけてくる。  落ち着いてはいるが、元気さが滲み出てくるような声音だ。 「はい」  あたしは返事をしながら身体の向きを変え、しっかりと向き合った。 「私は土谷(つちや)志麻。ここの家政婦やってます」  にこにこしながら名乗ってくれる。 「はじめまして。沖津棗です。よろしくお願いします」  あたしは丁寧に頭を下げた。
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