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入るとすぐに、大きなキッチンになっていた。
食器棚や冷蔵庫、システムキッチンに至るまで、白と銀を基調とする統一されたデザインになっていて、まるで清潔さと整然さの見本のようだ。
調理器具も、よく手入れのされたものがきちんと並んでいて、百均で買った安物が並んでた、あたしのアパートとは大違い。
ガス台やオーブンは壁際にあるけど、部屋の真ん中に大きな調理台がある。アイランド式、というやつだと思う。
そしてその調理台脇に椅子が並んでいる。
「ここが調理台兼使用人の食事用のテーブルなんだけど、どうする、ここで食べる? もし嫌なら、自分の部屋まで持っていってもいいわよ」
土谷さんは荷物を入口の脇に置いてから、そう訊いた。
「あ、大丈夫です。ここで食べます」
もしかしたら、立派なテーブルセットじゃないので、気を遣ってくれたのかもしれない。
でもあたしからしたら、今まで住んでたボロアパートの折り畳み式テーブルに比べたら、ぜんぜんレベルアップした環境だ。
「そう。じゃあ、そこに座って。ありあわせのものだけど、すぐに出すから」
「あの、教えてくれれば、自分でやっても……」
「いいのいいの。あなたの仕事は家事じゃないから。まあ、そのうち手伝ってもらうこともあるかもしれないけど」
「そうですか……。じゃあ、その時は遠慮なく声かけてくださいね」
「あら、ありがとう」
土谷さんは嬉しそうだ。
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