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言葉通り、本当にすぐに食事が出てきた。
マグロの刺身の切り落としに大葉とネギ、山芋の短冊切りを和えたもの。京がんもと筍の煮たもの。それにポテトサラダとみそ汁。
さらには自家製漬物に温かいごはんと、家庭料理に慣れてないあたしには、嬉しいメニューだった。
お茶も出してくれて、そのときに自分のぶんも淹れて、土谷さんは正面に座った。
「雲雀ちゃんには、もう会ったの?」
「まだです。お名前だけは、お兄さんから伺いましたけど」
「ああ、爽希さんね。じゃあ、今すぐじゃなくて、お茶の時間にご挨拶する? ひとりで集中して色々とお勉強するのがお好きなんで、わざわざ中断させてまで、っていうのも、あんまりおススメできないのよね」
「ああ、じゃあ、そうします」
アドバイスがありがたい。
「食べたらいったんひと休みして、そうしたらこの家をひととおり案内しておくわね。爽希さんに頼まれてるので」
「ありがとうございます。助かります」
どうやら、この家に勤めているのは、あたし以外だとこの土谷さんと井沢さんだけのようだ。まあ、広い家とはいえ、兄妹のふたり暮らし。あまり沢山の人間を雇ってもかえってやることがないのだろう。
そうやって、あたしは土谷さんと世間話をしながら、楽しく食事を終えた。
食器洗いだけは申し出て自分でやったあと、階下にあるという割り当ての部屋に案内してもらった。
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