5. 新天地

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 大きく取られた曇りガラスの窓の向こうは、すぐに道路になっている。  でも、通り抜けのむやみにスピードをあげた車や、配送のトラックなんかが行き交うわけでもないので、ものすごく静かだ。  そんな些細なことですら、今まで住んでた雑然というか騒然というか、そういう環境とは違う。  空気ですらいい香りがしてきそうだった。  それで、いつのまにか、ちょっとうとうとしてしまったらしい。  でもすぐに目が覚めたのは、頬にかすかに風が当たるのを感じたからだ。 (いけね、窓、開けっぱなしだったかな)  そう思い、慌てて身体を起こした。  前に住んでたのは安アパートの二階だったから、戸締りにはいつも気をつけてた。その癖が残っていたらしい。  よく考えたら、窓なんて、最初から開けてもいなかった。 (もしかして、どこからか隙間風でも吹き込んでるのかも)  あたしはそう思い、部屋を見回す。  ただ、そこでちょうど土谷さんが呼びに来た。  ドアのノックの音に、あたしはあわてて、スカートやブラウスに寝転がった痕の皺がないか確認し、急いで部屋を出る。  それで、ふと感じた違和感みたいなものは、すぐに忘れてしまった。
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