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大きく取られた曇りガラスの窓の向こうは、すぐに道路になっている。
でも、通り抜けのむやみにスピードをあげた車や、配送のトラックなんかが行き交うわけでもないので、ものすごく静かだ。
そんな些細なことですら、今まで住んでた雑然というか騒然というか、そういう環境とは違う。
空気ですらいい香りがしてきそうだった。
それで、いつのまにか、ちょっとうとうとしてしまったらしい。
でもすぐに目が覚めたのは、頬にかすかに風が当たるのを感じたからだ。
(いけね、窓、開けっぱなしだったかな)
そう思い、慌てて身体を起こした。
前に住んでたのは安アパートの二階だったから、戸締りにはいつも気をつけてた。その癖が残っていたらしい。
よく考えたら、窓なんて、最初から開けてもいなかった。
(もしかして、どこからか隙間風でも吹き込んでるのかも)
あたしはそう思い、部屋を見回す。
ただ、そこでちょうど土谷さんが呼びに来た。
ドアのノックの音に、あたしはあわてて、スカートやブラウスに寝転がった痕の皺がないか確認し、急いで部屋を出る。
それで、ふと感じた違和感みたいなものは、すぐに忘れてしまった。
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