16人が本棚に入れています
本棚に追加
さっきあたしが入ってきた、道路に面したものの反対側にあるドアを開けると、コンクリートの通路が続いていた。簡単な屋根もついている。
庭との境目には、やっぱりよく手入れされた背が高めの植え込みがあって、多分、本邸や庭からは見えにくいようになっている。
この家全体の敷地は、高台の斜面になった場所になるので、今あたしがいるのは、使用人住居の二階、ガレージの天井、本邸の一階、になる。
キッチンが二階、というちょっと変則的な構造をしていたのも、このためだ。できた料理を本邸に運ぶのに、いちいち階段を昇り降りしてたら大変だろうから、こういう造りになっているのだろう。
その通路の先に、本邸脇の小さなドアがある。
そこを入るとすぐに、ガラス張りのエレベーターがあった。
車椅子の雲雀さんのために設置されているのだという。つまり、彼女の部屋は上階にある。勤務時間中、あたしが待機しているための小部屋は、その隣にあるそうだ。
その脇を抜けると、すぐに開けた場所になっていた。
フロアのほとんどがひとつのスペースになっていて、庭側の壁はすべてガラス。すごく開放感のある造りだった。
「一応、表玄関から入り直しましょうか」
土谷さんはそう言って、モデルルームのように片づけ切った部屋を突っ切った。
最初のコメントを投稿しよう!