6. 螺旋邸

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 そこは玄関ホールになっていた。  かなりたっぷりとしたスペースが取られている。  一応、目隠し用の衝立が立っていて、さっき通ったリビングスペースとは仕切られている。濃い色の木枠に、蔦の透かし彫りの入ったガラスが嵌め込まれていて、向こうは見えないけれど光は透過するようになっていた。  ただ圧巻なのは、そこから上に伸びている、大きな螺旋階段だった。  たっぷりと余裕がある造りなので、渦を描くステップはあくまで壁際に沿い、中心には大きな円形の空間があって、天井まで吹き抜けの状態になっている。  中心に立って見上げると、なんだか、吸い込まれそうだ。 「すごいでしょ。五階の高さまで続いてるの。あんまりこれが目立つんで、ご近所では『螺旋邸』なんてあだ名がついてるとかなんとか」  土谷さんは、ちょっとだけ自慢そうに言った。 (たしかに、これはすごい)  なんていうのか、生活する面において、おそらく全く合理的でも機能的でもないものに、かなりの手間暇と金をかけているらしい、という点においても。 「でも……、五階ですか? この家って、二階もしくは三階、ですよね?」  あたしは素朴な疑問をぶつけた。
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