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キッチンやバーがあるのとは反対側の壁は、一面ガラス張りになっていて、広い庭がよく見える。
そこを出れば部屋の床と同じ石材でできたポーチもあり、木とガラスでできた椅子とテーブルが、端に二脚置いてあった。
庭の中心には、遠慮がちに新芽を出し始めている芝生が広がり、それを取り囲むように、よく手入れのされた庭木が並んでいる。
そういえば、門のところにあった植え込みは、ここに続いているようだ。
さっき通った通路も、思った通り、庭木が目隠しになって、ここからの眺めを邪魔しないようになっている。
「綺麗なお庭ですね」
「秋になったら枯葉やらなんやら、すごいけどね。月に一回、業者が来て手入れしてくれるから、私がやるのは、せいぜい端に寄せておくくらいだけど。あとは日々の水やり」
「へえ……」
なるほど、住み込み以外にも出入りしてる業者はいるというわけだ。
なんにせよ、金に困ってないらしいことは、実感として、よくわかった。
(目先の生活に困って、潜入ルポなんてのを引き受けるしかなかったあたしとは、えらい違いだ)
ただ、とにかくどこもかしこも洗練されて綺麗なのに、ひと気がないせいで、全体的にオシャレドラマのセットみたいでもあった。
雲雀、なんていう賑やかそうな名前の妹さんも、二階にいるらしいが気配がまったくしない。
でもこの感じだと、人が死んだことがあるなんて話も、なんだかそぐわない気さえしてきた。
(そういうドロドロしたものは、消臭スプレーとお掃除クロスで、全部拭き取ってしまえそうな家だもんなあ)
あたしは首を傾げた。
ちりりん。
澄んだベルの音が背後から聞こえたのは、そのときだった。
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