7. 鳥の名前の少女

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 ほぼ脊髄反射的に振り返ると、そこには、車椅子の少女がいた。  グラビア誌もびっくりの美少女だ。  聞いた年齢は、たしか十七歳。  一見、年相応に見えるが、目つきがなんとなく大人びている。  手にはガラスのベルを持っていた。よく外国の時代物映画なんかで、人を呼ぶときに使うようなベルだ。今鳴らしたのはこれだろう。 「ああ、雲雀ちゃん、降りてきてたのね。お茶の時間に紹介しようと思ってたんだけど。こちらが新しくいらした、沖津棗さん」  土谷さんが明るい声で言った。  あたしは頭を下げる。 「初めまして」  しかし、返事はなかった。  顔を上げると、思ってもみなかったことに、少女はあたしを睨んでいる。  綺麗な顔が台無しだ。 「兄さんに、あたしの子守はもういらないって言ったのに」  そして不満の声を、土谷さんにぶつけた。  あたしのことは、完全無視。いないものと見なしたいんだろう。 (まあ、常識的に言って、いらない歳だよね)  あたしは心の中で賛同した。  ただまあ、口にはしない。職がなくなってしまうので。 (でも今たしか、『もう』って言ったな。あたしの前任がいたってことか)  きっと、同じような態度を取ったんだろう。  なるほど、爽希さんや土谷さんの言ってた『気難しい』とは、こういう意味か。
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