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ほぼ脊髄反射的に振り返ると、そこには、車椅子の少女がいた。
グラビア誌もびっくりの美少女だ。
聞いた年齢は、たしか十七歳。
一見、年相応に見えるが、目つきがなんとなく大人びている。
手にはガラスのベルを持っていた。よく外国の時代物映画なんかで、人を呼ぶときに使うようなベルだ。今鳴らしたのはこれだろう。
「ああ、雲雀ちゃん、降りてきてたのね。お茶の時間に紹介しようと思ってたんだけど。こちらが新しくいらした、沖津棗さん」
土谷さんが明るい声で言った。
あたしは頭を下げる。
「初めまして」
しかし、返事はなかった。
顔を上げると、思ってもみなかったことに、少女はあたしを睨んでいる。
綺麗な顔が台無しだ。
「兄さんに、あたしの子守はもういらないって言ったのに」
そして不満の声を、土谷さんにぶつけた。
あたしのことは、完全無視。いないものと見なしたいんだろう。
(まあ、常識的に言って、いらない歳だよね)
あたしは心の中で賛同した。
ただまあ、口にはしない。職がなくなってしまうので。
(でも今たしか、『もう』って言ったな。あたしの前任がいたってことか)
きっと、同じような態度を取ったんだろう。
なるほど、爽希さんや土谷さんの言ってた『気難しい』とは、こういう意味か。
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