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あたしからしても、言ったあとからしまった、と思った。
こんなにずけずけ言ってたら、失礼な奴だと判断されてもしかたない。
(あーあ、さっそくクビかも)
絶望的な気持ちになってきた。
なにか問題でも起きたのかと、土谷さんが寄ってくるのが、視界の端に見える。
せっかくよくしてくれたのに、さっそくお払い箱になるなんて、本当に申し訳ない。
「なんでもない。忘れて」
でも、雲雀さんは急にそう言った。
怒ってる口調ではない。どちらかというと、困惑しているのを取り繕うとしているように聞こえた。
「あっち行ってて」
そんなすげないことを言われたが、とりあえず、クビとは言われなかった。
あたしは安心していいのか、後からなにか言われることを覚悟しておいたほうがいいのかわからなかったが、今ここでゴネてもしかたないと。引き下がるしかない。
心配そうな土谷さんを押しとどめ、あたしは簡易キッチンに一緒に戻る。
「お茶、いらない。片づけといて」
雲雀さんはこっちを見もしないでそう言うと、エレベーターに乗って、さっさと部屋に戻ってしまった。
「もったいない……」
思わず口走ると、土谷さんがあきれ顔をした。
「なに言ってんの。もっと大事なことが起きたんじゃないの?」
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