16人が本棚に入れています
本棚に追加
こうなってはしかたないので、お茶一式を一緒に下げ、それをメインのキッチンまで持って戻ることにした。
あたしが『もったいない』と何度も繰り返すので、結局、あたしたちで頂こう、ということになったのだ。
土谷さんも口では反対してたけど、ちょっとだけ嬉しそうだった。
(だって)
とあたしなんかは思う。
腕によりをかけて作った食べ物を、気分ひとつで『いらない物』扱いされてあっけなく捨てられるのは、なんだかやるせない。
自分たちの建物に戻ると、あたしはようやく安心して、土谷さんに経緯を説明した。
お兄さんが云々、は土谷さんにも心当たりがないらしく、首を傾げている。
ちなみにそのあいだご馳走になった、ミルクティーとクリームブリュレはやっぱり絶品だった。
「こう言っちゃなんだけど」
土谷さんは声を潜める。
「なんだか、うまくいってないみたいなのよね。爽希さんと雲雀ちゃん」
「そうなんですか」
「別に憎み合ってるとか、そういうんじゃないのよ。なんていうのかな、ことごとく噛み合ってない感じっていうか……」
(そういえば、堀田さんが『お家騒動』とかなんとか言ってたっけ?)
(それかな?)
(でも、『お家騒動』って、一般的に、後継ぎがどうのこうの、って問題だよね?)
(なら、違うか……)
あたしは、頭のなかで自問自答した。
でも当然、答なんて出なかった。
最初のコメントを投稿しよう!