7. 鳥の名前の少女

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 こうなってはしかたないので、お茶一式を一緒に下げ、それをメインのキッチンまで持って戻ることにした。  あたしが『もったいない』と何度も繰り返すので、結局、あたしたちで頂こう、ということになったのだ。  土谷さんも口では反対してたけど、ちょっとだけ嬉しそうだった。 (だって)  とあたしなんかは思う。  腕によりをかけて作った食べ物を、気分ひとつで『いらない物』扱いされてあっけなく捨てられるのは、なんだかやるせない。  自分たちの建物に戻ると、あたしはようやく安心して、土谷さんに経緯を説明した。  お兄さんが云々、は土谷さんにも心当たりがないらしく、首を傾げている。  ちなみにそのあいだご馳走になった、ミルクティーとクリームブリュレはやっぱり絶品だった。 「こう言っちゃなんだけど」  土谷さんは声を潜める。 「なんだか、うまくいってないみたいなのよね。爽希さんと雲雀ちゃん」 「そうなんですか」 「別に憎み合ってるとか、そういうんじゃないのよ。なんていうのかな、ことごとく噛み合ってない感じっていうか……」 (そういえば、堀田さんが『お家騒動』とかなんとか言ってたっけ?) (それかな?) (でも、『お家騒動』って、一般的に、後継ぎがどうのこうの、って問題だよね?) (なら、違うか……)  あたしは、頭のなかで自問自答した。  でも当然、答なんて出なかった。
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