8. 胡乱な人

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「なんで……?」  思わず、言ってしまった。  いやべつに、ここだって爽希さんの家ではあるんだから、当然、いてもいいんだけど。 (なにもわざわざこんな裏口みたいなところから入らなくても)  そう思って、言っちゃったんだ。 「こちらのほうが色々と都合がいいんで、あまり表玄関は使わないんです。起こしてしまってすみません」 (あんな立派な玄関わざわざ作っといて、それか……)  とは思ったけど、今度はさすがに口には出さない。 「いえ、まだ寝てなかったんで……。井沢さんかと思ったんです」 「ああ、彼なら自分の部屋に戻りましたよ。用があるなら……」 「いえ、急ぎじゃないので、大丈夫です。失礼しました。おやすみなさい」  あたしは部屋に戻ろうと、背中を向けた。でも。 「雲雀には会われましたか」  追いかけてくるように、質問が飛んできた。
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