8. 胡乱な人

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「はい。でもあんまり、気に入ってもらえなかったみたいです」  あたしはつい、正直に言ってしまった。  だって、初日から自分を大きく偽ったってしょうがない。  下手に取り繕っても、すぐに破綻するだろう。 「そうですか」  ただ、爽希さんは、特に意外そうでもなかった。 「彼女は、誰のことも気に入らないんです。なんとか騙し騙しやっていってください」 (……んん?)  雇われの身でなんだけど、どうも他人行儀な言い方に聞こえる。  そういえば雲雀さんは雲雀さんで、スパイがどうとか言ってなかったっけ。 (兄妹仲、悪いのかな) (でも本当に悪いのなら、わざわざ人は雇わないか)  謎だ。 「でも、雲雀さんってお名前、素敵ですね」  あたしは話題を変えることにした。 「名前……? 素敵……?」  あれ、なんだか怪訝そう。  考えたこともない、といった雰囲気だ。 「そ、そうですか」 「鳥の雲雀は、朝の象徴とか、晴れた日……『日晴(ひば)り』が語源だなんて言われてるらしいです。なんだか未来志向を感じるお名前ですよね」  思わず取るに足りない豆知識をべらべら喋ってしまったが、爽希さんはそれをどうやら面白がってくれたようだった。 「そんな謂れのある鳥だとは、知りませんでした」  感心した表情でこちらをじっと見つめる。
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