8. 胡乱な人

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 そこで気分がよくなったあたしは、つい調子に乗って続けてしまった。 「爽希さんも素敵なお名前です」  すると、目に見えて顔が曇った。 「そうでもないですよ。子供の頃はアイスみたいな名前だ、ってよくからかわれました」 (ああ、まあ、たしかに)  子供にありがちな発想だ。  でも。 「でも、爽っていう字、爽やかってだけじゃなくて、たしか、夜明けという意味もあるんですよね。夜明けの希望……、すごく願いのこもったお名前に思えます。雲雀さんとも、なんだか共通してるし」  あたしはけっこう、人の名前について考えるのが好きだ。  自分の名前に、というか名づけてもらったことに、思い入れが強いからかもしれない。 「本当にそう思いますか?」 「ええ。名付けた方の愛情を感じます」  これは、嘘偽りない感想だ。  ただ、爽希さんの反応はといえば、さらに戸惑っているようだった。
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