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「……あなたは、不思議な人ですね」
爽希さんが唐突に言った。
「え、どういうことですか」
「なんだか、あまり雲雀に同情していないようだ」
(同情……。同情、ねえ)
「あたし、あの……」
「はい」
「けっこう、世間で言うところの『不幸な生い立ち』で」
「ああ……」
爽希さんは、あたしが次になにを言おうとしているのか、きちんと待ってくれた。
そんなことない、なんていう無駄なフォローは入れてこなかった。
話しやすくて助かる。
「だから、けっこう同情される立場でもあったんです」
「なるほど」
「だから気づいたんです。同情することが、相手を見下す隠れ蓑になってることがあるって」
爽希さんは、目を見開いた。
「だからそれに気づいてからは、安易に同情しないように、気をつけています。あと私の基準からすると、雲雀さんはそもそも、気の毒がられるような立場の人じゃないように思えます」
(ああ、言っちゃった……)
あたしはすぐに後悔した。
言った内容じゃない。
生意気と取られてもおかしくないような、はっきりとした喋りをしてしまって。
(やっちゃったなあ)
で、爽希さんの反応はというと。
なぜか、急にぬっと手を差し出してきた。
握手をしようとしてる、と気づくのに、数秒かかってしまう。
その手を無言で握り、ちょっとのあいだ見つめあった。
なんでそんなノリになったのかはよくわからなかったけど、爽希さんの手は温かかった。
ただ、薄着でいたせいか、くしゃみが出てきた。
それであたしは手を引き、もう一度改めて挨拶をしてから、部屋に戻った。
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