8. 胡乱な人

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「……あなたは、不思議な人ですね」  爽希さんが唐突に言った。 「え、どういうことですか」 「なんだか、あまり雲雀に同情していないようだ」 (同情……。同情、ねえ) 「あたし、あの……」 「はい」 「けっこう、世間で言うところの『不幸な生い立ち』で」 「ああ……」  爽希さんは、あたしが次になにを言おうとしているのか、きちんと待ってくれた。  そんなことない、なんていう無駄なフォローは入れてこなかった。  話しやすくて助かる。 「だから、けっこう同情される立場でもあったんです」 「なるほど」 「だから気づいたんです。同情することが、相手を見下す隠れ蓑になってることがあるって」  爽希さんは、目を見開いた。 「だからそれに気づいてからは、安易に同情しないように、気をつけています。あと私の基準からすると、雲雀さんはそもそも、気の毒がられるような立場の人じゃないように思えます」 (ああ、言っちゃった……)  あたしはすぐに後悔した。  言った内容じゃない。  生意気と取られてもおかしくないような、はっきりとした喋りをしてしまって。 (やっちゃったなあ)  で、爽希さんの反応はというと。  なぜか、急にぬっと手を差し出してきた。  握手をしようとしてる、と気づくのに、数秒かかってしまう。  その手を無言で握り、ちょっとのあいだ見つめあった。  なんでそんなノリ(・・)になったのかはよくわからなかったけど、爽希さんの手は温かかった。  ただ、薄着でいたせいか、くしゃみが出てきた。  それであたしは手を引き、もう一度改めて挨拶をしてから、部屋に戻った。
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