9. ぎこちない朝食

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 本邸のテーブルには、もうすでに兄妹が揃っていた。  対面式で座り、特に会話をするでもなく、爽希さんはタブレットを、雲雀さんはスマホをそれぞれにいじっている。  なんというか、団欒、という言葉には、程遠い雰囲気だ。  志麻さんは手際よく、ワゴンから食事を運び二人の前にオムレツの皿、切ったトースト、オレンジジュース、ベリー類を載せはちみつをかけたヨーグルトを置いた。  あたしもそれを手伝っていると、雲雀さんが不思議そうに訊いてきた 。 「どうしてあなたが手伝ってるの」 「ええと、一日の流れをだいたい把握しておきたくて、あたしが無理矢理頼んだんです。志麻さんは被害者ですので、叱ったりしないでください」 「被害者」  あたしの言い方がおかしかったのか、雲雀さんは目を見開いたあと、プッと吹き出した。  爽希さんが、弾かれたように顔を上げる。  驚いたみたいだ。 「あ、朝から騒いですみません」  あたしはそう詫びて、急いで志麻さんが待機している、部屋の隅の簡易キッチンに退避した。  そこではすでに、食後のコーヒーを作り始めているところだった。いい香りがあたりに立ちこめている。 「ねえ、勤務時間が始まったら」  ふいに、雲雀さんが声をかけてきた。 「沖津さん、散歩につきあってくれない」 「はい」  あたしは振り向き、なにげなく答えた。  でも、横にいる志麻さんが目を見開いたのと、また爽希さんが顔を上げたのを見て、なにやらこれはかなり珍しいことなんだと気づいた。
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