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車椅子はたぶん、あたしが押してなくても動かせるんだと思う。
でも、雲雀さんはなにも言わないので、あたしはそのまま押し続けた。
路面はよく舗装されているし、道幅も広い。
車も通らないし、住宅街の道だから、歩道と車道も分かれてなくて、道路幅いっぱいに使える。
となると、車輪のついたもので進むのが、なんだかちょっと小気味いいのだ。
自転車に初めて乗った、子供の頃を思い出す。
そんな些細なことでご機嫌なあたしに対して、雲雀さんといえば、終始無言のままだった。
十字路やT字路になると行先を指さすが、反応するのはそれだけ。
まあ、あたしの気分なんて、知る由もないのだろう。
やがて、最後の角を曲がると、急に、視界が塞がった。
背の高い堤防が、眼前に巨大な壁となって、広がっていたからだ。
雲雀さんが指さすまま、それに沿ってしばらく行くと、スロープになっている場所があった。
さすがにきつくなっていると、雲雀さんが電動のスイッチを入れた。
それでゆっくりと昇りきると、一気に視界が開ける。
眼下には、大きな河川敷が広がっていた。
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