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「あれ、誰だったんですか」
そのまま表門から入りながら志麻さんに訊いてみたが、首を横にふるばかり。
「爽希さんか、雲雀ちゃんに訊いてくれる。私の口からはちょっと……」
そんな会話をしながらリビングに入ると、そこには、雲雀さんがいた。
「あ、あの……」
あたしはついさっき言われた言葉を思い出し、つい及び腰になる。
(殺される、なんて、リアルに言われる言葉じゃないよな……。そんなこと言う相手のこと、なんて訊けば……)
迷っているうちに、雲雀さんのほうが先に口を開いた。
「芙蓉さんが来たのね」
「ふ……?」
「あの女、芙蓉さんていうの、父さんの本妻さん。名前」
「あ……」
(本妻……)
そうだ。たしか、堀田さんが言ってた。ここの兄妹が隠し子だとかなんだとか……。
(でもなんで、ひと殺し?)
そこの関連がわからない。
「なんか、変なこと言ってなかった?」
雲雀さん、なかなか勘がいい。
(……っていうか、今までも何回かあったからこその経験則?)
「そうですね。ちょっと、その……」
なんだかあたしの口からはあんな言葉、言いにくい。
でもまさか、この家で出た死人って、あたしの前任者じゃ……と思うと、確かめた方がいいような気もする。
「あの人の息子が、この家で死んだの。それでいつも言いがかりをつけてくるのよ。このあいだの花束も、そう」
(あ、あれ、意外とあっさり教えてくれた)
最初に思ったのは、そんなことだった。
でも次の瞬間、とんでもないことを言われたことに気づいた。
(隠し子たちの住む家で、本妻の息子が死んだ……?)
それは、なにかの一線を越えた出来事にしか思えない。
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