14. いなくなった子 1

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 ここまでしてようやく着いた部屋は、あっけないくらいに小さいものだった。 「どうぞ」  爽希さんは紳士的な口調でそう招いてくれたけど、なんだか、二人きりになるとちょっとした圧迫感を感じるような狭さだ。  ここは本当に事務的なことなんかをするだけの部屋らしく、古めかしい木製のデスクと、黒い大きな金庫があるだけ。飾りめいたものもなにもないし、なにより生活感がない。  まあ、爽希さんの寝室は別にあるから、ここに生活用品はあまり必要ないのだろう。ちなみに、そっちは雲雀さんの部屋の向かいにある。  部屋の天井の灯りすらなく、デスクの上にランプがあるだけの部屋は薄暗く、まるで洞窟かなにかのよう。 (爽希さん、こんな暗い部屋で、持ち帰った仕事をいつもしてるのか) (物好きというか、なんというか……。リビングやあっちの部屋は、ガラスが多用されてたりして、めちゃくちゃ明るいのに)  でも、ここでふと思い出す。  そういえば、面接を受けたオフィスもそんな感じじゃなかったっけ。 (単なる好みか。ごちゃごちゃしてるのが好きじゃないのかな。同情して損した)  そんなことを考えていると、この部屋に唯一ある椅子を勧められた。つまりデスクの椅子だ。爽希さんはというと、デスクの端に寄りかかる。 「芙蓉さんに、お会いになったそうですね」 「ああ……」  あの感じ悪いおばさん。思い出してもなんだか胸がモヤモヤする。 「なにか失礼なことを言われなかったですか」 「いえ、私に対しては別に……」  言い方から、まあすくなくとも、爽希さんもあの女性にいい印象を持ってないことはわかった。
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