16人が本棚に入れています
本棚に追加
「もともと、芙蓉さんは母や僕たちを、妾、妾の子、と目の敵にしていました。でもそれからは、さらに拍車がかかって……。僕からしたら、息子さんを亡くしたことは、気の毒だとは思います。でも、結局雲雀があんな目にあったのも、大基さんが原因なんだと思うと、こっちこそ相手を責めたいくらいだ」
「大基さん?」
「ああ。芙蓉さんの息子さんの名前です。僕より、数ヵ月年下でした」
(ということは、爽希さんたちのお父さんは、二股かけてたってことか)
ひどい奴だなあ、とは思うが、仮にも父親だ。爽希さんにそれを言うのは控えた。
「僕たちは認知も受けてないし、父からもらったものなんて、せいぜい名前とこの家くらいです。ましてや向こうの財産を貰おうとか家を乗っ取ろうとかなんて、考えたことは一度もない。でも、芙蓉さんからすると、それが信じられないらしい」
(まあ、人は自分を基準に他人を判断するって言うしな)
あのちょっと品のない態度から想像するに、色々とがめつい性格をしている可能性は高そうだ。そうじゃない人がいるなんて、思いもつかないのだろう。
「そんな事情があるなんて、知りませんでした。今度見かけたら、すぐに追い払います」
「すみません。あなたには無関係なことなのに」
「いえいえ。私は雲雀ちゃんのお世話係ですから。職務のうちだとも言えます」
あたしは胸を張ってみせる。
爽希さんは、またなんとも奇妙な表情になった。
「本当に、あなたは不思議な人ですね」
感激してくれているのか、呆れているのか、よくわからない言葉だったけど、あたしは前者に解釈することにした。
最初のコメントを投稿しよう!