16人が本棚に入れています
本棚に追加
あたしたちはこのサイレンが聞こえると、家に戻ることになっていた。今頃、志麻さんがお昼ご飯の準備をして待っていてくれるはずだ。
「私たちはもう帰るけど、マサシくんも、そろそろ家に帰ったほうがいいんじゃない?」
あたしの言葉に、マサシくんは俯いてしまう。
(ああ、そうか。今帰ると、サボったのがバレるのか)
かと言ってこのままここにいても、多分食べ物も持ってないだろうし、変な人についていったりしても危ない。
あたしは放っておいて帰ってしまっていいものか迷っていると、雲雀さんが言った。
「うちにご飯食べにくる?」
「えっ、いいんですか」
とたん、破顔する。
(ダメだ。こんなに素直じゃ、おかしなヤツに声をかけられても、ついていっちゃいそうだ)
それくらいなら、いったん一緒に食事を済ませてから、改めて送っていったほうがいいだろう。
そう思ったのであたしは口を挟まず、荷物をまとめた。
「あの……、僕、車椅子押します」
マサシくんが申し出てくれるので、お願いすることにした。
初めての経験なんだろう。おっかなびっくり、といった感じではあったが、なるべく揺れないよう、真剣な顔つきで慎重に進める姿は、なんだか微笑ましい。
最初のコメントを投稿しよう!