16. いなくなった子 3

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 その日のお昼はめずらしく洋食系のワンプレートだった。  しかも、なんだかちょっとお子様ランチっぽい。  オムライスに肉団子、添えられたポテトサラダに入っているにんじんなんて、星の形に切ってある。  こんなのは初めてだったから、たぶん、マサシくんのためだ。 「なにこれ」  雲雀さんにとっても初めてのことらしく、さっそくツッコミが入る。 「たまにはいいかと思いまして」  志麻さんがそう返事するあいだにも、マサシくんは興味津々な目つきで皿の上の料理を眺めている。  それがあまりにも嬉しそうだったからだろう。雲雀さんもそれ以上は言わず、食べ始めた。  マサシくんは助けを求めるようにあたしを見る。 「どうぞ」  それで、勧めてみると行儀よく「いただきます」と言ったあと、料理に手をつけた。  なんだかずいぶん抑制された行動を取る子だ。 (行儀いいっちゃあ、いいんだけど)  さっきもなんとなくひっかかったけど、本人に追及したってしかたない。  そこにこだわるのはやめて、あたしも、食事に集中することにした。
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