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食事を終え、お茶が出るころになると、志麻さんは改めてマサシくんに訊いた。
「おうちはどこなの? 近く?」
わざわざそう訊くってことは、見覚えのある子ではなさそうだ。
買い物や近所づきあいの範疇のことは基本的に志麻さんがやっているので、その手の事情には、この中では一番詳しいはず。
(この辺の子じゃなさそうだな……)
案の定、マサシくんはかぶりを振った。
「学校サボったことは黙っててあげるから、明るいうちにおうちに帰りなさい。駅まで送ってあげるから」
志麻さんが優しく言う。
でも、マサシくんは泣きそうな顔になった。
「もうすこしだけ、ここにいたらだめですか」
それを聞いて、志麻さんも困った顔になる。
家の中には、気まずい沈黙が流れた。全員でにこにこしていた、さっきまでの食事時間からの急転直下だ。
「そんなに家に帰りたくないんだ」
雲雀さんが、ふいに口をはさむ。なんだか、気持ちはわかるという雰囲気で、ちょっと意外だ。
「帰りたくないわけじゃないんです。でも……」
マサシくんはそれ以上は口をつぐんでしまった。
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