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「そんなにいたいのなら、おうちにいったん連絡をしましょうか。親御さんからの許可があるなら、こちらも安心してお預かりできるから」
とうとう、志麻さんが助け舟を出す。
でも、マサシくんはそれを聞くと、見るからに顔色が悪くなった。
「あの、わかりました。やっぱり、帰ります。でも、最後にひとつだけ、お願いを聞いてもらってもいいですか」
「なに?」
「あの螺旋階段を見せてもらってもいいですか」
なんだか、おかしなことを言いだした。
でもたしかに、さっきからチラチラと視線を向けてはいた。
(まあ、あそこまでりっぱな螺旋階段なんて、珍しいもんね)
「なに、将来建築家でも目指してるの?」
雲雀さんが皮肉そうに言った。
「雲雀さん……」
大人げない態度だと思ったのだろう。志麻さんが声をかけると、あからさまに舌打ちをした。
「勝手にすれば」
それだけを言い捨て、さっさとエレベーターに乗り込んでしまった。
まあ、要するにふてくされてしまったようだ。
「じゃあ、荷物持って。ちょうど玄関もそっちだから、好きなだけ見てから帰ればいいわね」
志麻さんはエプロンをはずし、マサシくんの手をごく自然に取った。子供の扱いには慣れているらしい。
あたしもなんだか成り行きでついていった。
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