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マサシくんは螺旋階段の中心の開いた空間に立ち、身体を逸らせながら天井を見上げた。
「高い……」
呟く声は小さく、すこし怖がってはいるようにも聞こえる。
それから床に視線を落とし、まるでそこになにかが置いてあるように、じっと見つめている。
「なにが……」
その態度が不思議で、質問しようとした時だった。
表から車の停まる音が聞こえ、誰かが携帯電話で話す声が聞こえてきた。
爽希さんだ。
たぶん、仕事の話をしているのだろう。厳しい調子の声だった。
志麻さんが気づいて、ドアを開ける。
それを当然のような態度で入ってきて、螺旋階段まで来たとたん、喋りが止まった。
目を見開き、口を何度か音無しでパクパクとさせたあと、相手に「後でかけ直す」と硬い声で告げ、耳から離した。
そして、マサシくんの小柄な身体を、まるで吹き飛ばそうとでもするような怒鳴り声をあげた。
「なぜ君がここにいる!!」
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