16人が本棚に入れています
本棚に追加
爽希さんの突然の大声に、その場にいた人間は、全員身をすくめた。
ふだん物静かなのに、こんなに我を忘れている姿、初めて見た。
(なんか、怖い)
志麻さんも同じみたいだった。
ただ、すごい勢いでマサシくんの前に立ったのは意外だった。
とっさに、爽希さんから庇ったんだ。
「あの、いったいどういうことですか。なにも、子供の前で大声を出さなくても……」
あたしも間に割って入って聞いてみた。
本当に質問したかった興味というよりは、この刺々しい空気をなんとか変えたいという気持ちのほうが強い。ジャーナリスト志望としては情けない限りだけど。
「そもそも、彼を連れてきたのは誰ですか」
でも爽希さんは、逆に質問を返してきた。
「あの、それは、私ですけど……。でも、マサシくんはいい子ですよ」
「マサシくん?」
爽希さんは不思議そうな表情になった。
「誰の話ですか」
「いやだから、その、この子……」
あたしがマサシくんに視線を送ると、爽希さんは急に皮肉な笑みを浮かべた。
「なるほど。『いい子』が、小賢しくも偽名を使ったわけですか」
「偽名?」
なんの話をしてるんだろう。
「彼の名前は、『セイジ』ですよ。福繁正嗣。芙蓉さんの息子、僕らの異母弟です」
最初のコメントを投稿しよう!