17. いなくなった子 4

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 突き放すような物言いに、正嗣くんはますます身体を縮こまらせていたけど、それでもしっかりと首を振ってみせた。 「仇なんて……。だって、本当は、全然仲良くなかったんです。兄さんは、その、いつも僕をいじめていたので……。殴られたり、持ち物を勝手に捨てられたり……。母さんは兄さんだけをかわいがっていたから、言っても、助けてくれなかった」 (うわ、本当ならえぐい……)  でもそんなことをされたとしても、なんといっても実の兄、『いなくなってよかった』とは、さすがに続けられなかったのだろう。そのまま黙った。 「じゃあ、あんたもあたしと同じね。あいつの被害者なわけ」  そのとき、突然背後から声がした。  雲雀さんだ。  いつの間にか、降りてきていたらしい。 「雲雀、おまえ……」  爽希さんは意外な援軍に、たじろぎ始める。 「だましたのは、正直怒ってる。でも、いい機会かもよ。この際だから、ちゃんと話聞くのも悪くないんじゃない」 「いいのか」 「いいもなにも、正直、今の状況にはとっくにうんざりしてる。でも芙蓉さんなんてまともな話ができる相手じゃないし。マ……、違った、正嗣と話したほうがよっぽどマシなんじゃない? 試してみようよ。なかなか見どころがありそうな気もするし」
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