第10話 武装過激派集団と魔王軍

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第10話 武装過激派集団と魔王軍

 最近は依頼を受けつつ魔王城で暇をつぶしながら色々な事をやっていた。そして今、キッチンを借りている。そう、久しぶりに自分で料理を作りたくなってきたのだ。 「よぉし!今日はちょっと頑張っちゃおうかな!」 「魔王様の作る料理は少し楽しみですね。」 「今日は何を作ってくれるの!?」  ホールとテリーに見守られながら俺は包丁を持って早速具材を切ろうとしたときだった。幹部の1人であるハリスが何やら急いだ感じでこちらにやってきた。 「サトウ様ぁー!」 「なんだ、無礼だぞ!」 「す、すみませんホール様...えっと、今入ってきた情報です。ナトゥーラ王国が今危機に面しています...!武装過激派集団の『火の会』が王国を攻め落とそうとしているのです!」  突然来たかと思ったら、いきなり恐ろしい事を言ってくるじゃないか。 「は?...なんで?」 「理由は多分国土の取り合い...戦争でどこかの国が過激派集団に肩入れをして攻めているのかと...!」 「でも戦争しているようには見えなかったぞ。」 「ええ、これはたった今始まった戦争ですから...どうしましょう!あなた様にとっては様子を見るだけにもいかないでしょう!」  その意見は正しい。ただ相手の戦況を見ない限りは...いやそんな事を言っている暇はないだろう。せっかく料理を始めようとしたのを妨害した罪もあるしな。だた「火の会」とは何者なんだ... 「ナトゥーラにも軍はあるだろうが、いきなり始まったなら武器の配備も遅れるだろう。なので我々も力を貸そうか...どれくらい投入すれば勝てる?」 「その気になってくだされば結構!わたくし1人で十分でございます。」  声が聞こえた入口の先には、幹部の1人であるテオが立っていた。 「その言葉は頼もしいんだが、一体どうやって倒すんだ?」 「あなたが邪魔だと思われるその過激派を呪い殺すのですよ。」  呪い殺すだって?テオはこの雰囲気からして呪いを司る術士なんだろうか。恐ろしい力だな...まあここは1つ彼に任せてみるか。 「分かった、任せよう。ただ過激派だけを倒すように。良いな。」 「承知しました。では『過激派だけ』を皆殺しにしましょうか。」  そう言った後一瞬にしてどこかへ消えていってしまった。上手くやってくれれば良いけど... ◇  そしてここはナトゥーラ王国。今過激派である「火の会」が急襲での戦いを制し、今にも完全に勝ちそうになっている。 「はっは!もうすぐこの国も終わりだな!」 「じゃあもう行っちまおうぜ。我らの王に報告しないとな!」 「待ちなさい!まだ私と戦っていないではないか。」 「ああ?雑魚は黙ってろ!」 「そういう事を言ってしまうのですね?では...さようなら。」  そう言って手を降った瞬間に、その相手は一瞬で気が抜けたように倒れてしまった。 「な...なんなんだ。お前は...!」 「わたくしは魔王軍幹部。テオと申します。今日は過激派を1人も残さずに殺せとサトウ様から指示がございましたので...残念ですがあなたがたはここまでです。」  魔王軍幹部と言う言葉にある1人が怖じ気ついていた。 「ぼ...ボス!魔王軍幹部ってのは人の能力を超えた恐ろしい術使いだ...!」 「だからなんだってんだ!行け!お前たち!その『術』とやらを発動させない内に攻撃するのだ!」  そう言われて敵の何人かがテオに向かって飛びかかってきた。 「だからいくらかかってきても無駄なんですよ。」  次の瞬間手から出る魔法によって、テオにかかってきた人は全員身動きができなくなり地面に叩きつけられた。 「こ...これは...!」 「に...逃げるんだぁ!」 「では、そろそろ終わりにしましょうか...さようなら。」  そう言った瞬間にこの国の中にいた過激派の武装集団は全員一斉に棒のように倒れてしまった。そう、全員一瞬の内に呪い殺したのだ。 「準備運動にもなりませんでしたね。さて、魔王様に報告をしないと...」 ◇ 「...と言うことで、過激派全員を呪い殺して来ました。」 「よ...よろしい。後で現場に行こう。」  それなら最初からその呪いの魔法を全体に使えば良いんじゃないかと思った。彼は多分準備体操程度の感じで任務をこなしていたのだろう。命令を楽しんで遂行しているような...やっぱり大して強くないって事だろうか?  俺は自分の力だけでなくこんなに強い幹部を手に入れてしまったのか。それでも戦争状態を数分で解決してしまうとは...魔王幹部、やばすぎだろ... ◇ 「おいおい...本当にすごい人数を呪い殺したんだな。」  俺は国の様子を見に行ってまずそう思ってしまった。あとは短時間の間にこんなに国の建物が壊されていることに怒りと悲しみを覚えた。  俺は国の復興のため幹部と魔王軍の一部とテリーを連れて魔王城からやってきた。国民は魔王幹部が居ることを恐れていたがその真ん中に俺が居ることを確認したら、みんな少しは安心していた。  それでも少しでも怪しまれては困るので俺はみんなの前であからさまに幹部や軍に指示を出した。 「これより、ナトゥーラ王国の復興作業を命ずる!基本的に国民の要望通りに国を復元していくこと!」 「「「はい!魔王様の指示とあらば!」」」  こうして臨時の復興作業が始まった。まずは死体を除去すると言って幹部の1人であるエイミーが除去魔法を使って一瞬の内に死体が消えていった。 「...やっぱりやばいなあ。俺の幹部たち。」 「私も本気を出さないとですね。」  そう言ってホールは何かを唱えたかと思ったら小さな人のような...そう、精霊が召喚された。 「精霊よ!後片付けと復元をして綺麗にしちゃいなさい!」  そうすると精霊たちはせっせと働き、ものの数分で争い前の状態になった。俺の幹部は相当すごい人たちの集まりなんだと実感した。  でもそれって、精霊を使う程だったのだろうか?普通に国民総出でやれば数日でできそうな感じだけど...まあ喜んでくれれば良いか。 「魔王よ。お前のことを、見直したぞ!」 「こんなに役に立ってくれるのねぇ!びっくりだわ!」 「まあ、魔王も世代交代したので...」  とにかく喜んでくれたし、魔王に対する偏見が少しでもなくなればそれで良いかと思った。そうして俺は幹部らを引き連れて魔王城へ戻っていった。 ◇ 「そうだ、料理の続きをするんだった!」  俺は早速支度を始めた。今日は幹部が良く働いてくれたから、特に美味しいものを作ってあげないとなと思いながら包丁を取り出し具材を切り始めた。 「痛ぁっ!」  考えてみれば包丁を使うのも久しぶりだ。 「大丈夫ですか!サトウ様!今すぐ処置を...!」 「よろしくおねがいします...」  俺もまだまだ頼りっぱなしだなぁ、色々と。
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