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第12話 魔法とあいつら
「まずは、あなたの魔法属性を見ましょうか。ではテリーさん。こちらに手を置いてくださいね。」
「はーい!」
俺と魔王幹部たちは今日から暇な時にテリーに魔法を教えることになった。今日は初日のため、魔法属性を見るんだそうだ。ちなみに魔法属性は上級の魔法使いではないと見ることが出来ないんだそうだ。
ここの世界の人は全員何かしらの魔法属性を持っていて、それに寄ってどのような魔法を使えるか、これからどう教えていくべきかが決まる。俺と俺の幹部たち全員はその様子を見守っていた。
「これからあなたの脳内に絵が映し出されます。その絵は何か正直に言ってくださいね。」
そう言うとホールはテリーの手を握って、魔法を唱え始めた。
「...あ!なんかかわいいお人形が...うわぁぁ!あのお人形が...」
ホールはテリーの手を握るのをやめた。
「すみません。悪い物を見せてしまいましたね...でも人形が出てきたならそれは、『闇属性』ですね。」
へー。そんな事で分かるんだ。でも闇属性か...この純粋な感じに合わないなぁ。俺は光属性とかイメージしていたんだけどなぁ...
ちなみに属性は全部で8つある。火、水、風、土、光、闇、神、悪らしい。「闇」と「悪」とか「光」と「神」といったものも特徴がかなり違うらしい。
「魔王幹部は全員闇属性のプロなので、好きな人から教わるのが良いですね!あなたは今までの私達の行動を見て何をしてみたいですか?」
一体テリーは何を習得したいんだろう...?
「私、影移動しながら悪い奴を殴ってみたい!」
てか、しれっと恐ろしい事言うじゃん...やっぱり闇属性が一番似合うのかな...ていうか俺も創作魔法を使えばそういう事出来るのかな?後で俺もやってみよう。
「良い目標が出来ましたね。ではサヴェリオとブライアン!教えてあげなさい。」
「「かしこまりました。」」
幹部の1人であるブライアンは魔法使いの中でも珍しい接近戦に特化した特殊な闇魔法を持っている。多分闇をまといながら殴ったりするんだろう。
けど上手く習得できるかなぁ...?俺はちょっと心配だけど、まあテリーを信じてみるかな。結局は彼女のやる気次第だしね。
◇
あれから2週間経ったが、彼女はメキメキと成長している。魔法界にも地球でのスポーツと同じ様に「子供の頃からやっている人」と「大人になってから始めた」人とでは実力が大きく開くみたいだ。その「子供の頃からよくやっている」サイドでも特にテリーはよく覚える方だという。
今日も彼女は幹部の2人を連れて森へ行っているらしい。もうすぐ帰ってくる時間帯だろう...
「ただいまー、今日も全然モンスター出てこなかったよ...」
「何が原因なのでしょうかね...」
「俺だってモンスター倒してぇよ...!」
「それってさ、魔王の幹部を連れてるからだよね?普通の人やモンスターからすればオーラは半端ないんだよ?」
「...気をつけます」
気をつけても出ちゃうものは出るからなぁ...
まあでも成長がすごいのは事実だ。影移動も出来てきているし、影から出てきて攻撃する事も上手く出来ている。俺は安心したので...
「じゃあちょっと出かけてきますね。色々な事は頼みます。」
「はい!いってらっしゃいませ!」
俺はいつものように町も見回りも兼ねて町を歩いていた。そしたらどこか見慣れた3人組がこちらに歩いてきた。そう、あの3人組だ。俺をいじめてきたやつ。
俺はこっちに絶対来るだろうと思い、少し俺に対する反応を見て遊んでやろうかと思った。
「あ!お前あの時の...しぶとく生きていたんだな!」
「お前ら、誰だっけ?」
ここまで言えてしまえば大丈夫だ。後は「他の人」も加わって攻撃してくれる。
「なんだと!?ゴミのくせに生意気だぞ!」
次の瞬間大声を聞いて町の人たちが出てきた。そしたら予想通り1人のおじさんが3人組に対して怒った。
「こらぁ!お前らの方がゴミだろうが!その方は勇者であられる方だぞ!なんという失礼を!」
「は?...え!?」
俺は戸惑っている3人の様子が本当に面白かった。
「...十分笑ったし、そろそろどいて貰うよ。」
そうして俺は魔法陣を展開して前にやられた風魔法を10倍くらいでお返ししてやった。俺は「創作魔法」でどんな魔法でも作れるからな。
「ぐぁぁぁぁぁぁ」
俺に強がっていた割には意外と守りが弱いんだなと思うとさらに笑いそうになってしまった。まあそこは勇者ですから。あまり笑わないようにしておこう。
「今日は少し気分が良くなったな。今日は美味いものでも買っていくかな。」
俺は最近気がついた能力のテレパシーで夕飯は作らなくて良いという旨を言っておいた。俺は創作魔法という能力を完全に多用している。
「じゃあ...その鶏肉を焼いたやつを...10個ください。」
幹部7人とテリーと俺2つ...完璧だな。
◇
魔王城に着いた。俺はみんなに買ってきた鶏肉やピザ、パン、あと地球で言うオードブル的な食べ物を机の上へと置いた。
なんと言っても今日は酒を買ってきたんだ。高いワインから選んで取り寄せてもらった。
「サトウ様、今日は良いことでもあったのですか?私達、本当に嬉しいです。」
「...まあな。良いこと、一応あったよ。まあ幹部たちも席について!早速食べようよ。」
良いことは早く過ぎてしまう。その言葉の通り色々と話して食べていたらあっという間に時間が過ぎていってしまった。俺は外を眺めながら今日のことを振り返っていた。
「今日は本当に気分が良かったな...でも何か忘れていたような...」
...俺は思い出した。そう、今日あいつらに「ざまぁ」って言うのを見事に忘れていた。ただ会って勇者だってことを知らせて風魔法でふっ飛ばしただけだった。
「次会った時は『ざまぁ』って言えるようにしておこう...」
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