第2話 最強とピンチ

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第2話 最強とピンチ

 そうだ。確かに俺の代わりはいくらでも居る。前世もゴミだった。俺一人の力では何も出来ない。あいつらの言っていることにもある程度は同意する。でも親に存在を許されたんだ。少しでも、少しでも必要にはされていたんだと思いたい。  もしあいつらがそう言うなら俺は誰にも代われない、唯一の、影響力のある人間になってやる。そして今俺の冒険の目標が決まったのはあいつらのおかげだからな。今度あったらお礼とざまぁをしてあげよう。 「でもそんな事...あれ?俺は生きている。」  なるほど、下が土だから助かったのか、良かった。そして俺は辺りを見回し同じ世界であることを確認した。 「同じ世界だ...ん?」  俺は細い路地裏にある張り紙を見た。その内容を見た俺はびっくりした。 「『あなたの能力を他の能力と交換いたします』!?もしかしたら、俺でも強くなれるかも知れない!そして...ざまぁ出来るかもな。」  俺の冒険はここからと言わんばかりに力を振り絞って路地裏に入って行き、その店に入った。店の中はガラス容器のようなものばっかりで、受付のような机の所におじいさんが立っていた。 「今日は何の用だい?」  僕はこの温かな声に包まれ、また泣きそうになってしまった。でも泣くのをこらえて、今までの事情とやってほしい事をすべて話した。 「...て言うことで、僕の能力を差し上げるので力のある能力と交換してください!」 「なるほど、そんなつらい事があったのか。でもまずは君の能力を見てみない限りはどんな能力と交換すればいいか検討がつかんからなぁ。」  僕はたった1つのスキルを見せた。僕の30年間の人生をほとんどすべてニートと料理の勉強に費やした結果だ。渡したくないなと一瞬思ったが、自分が次へ進むためにはこれも仕方がないものだと思ってる。 「ほほう。V(5)の数値かこれは珍しい...そうだなぁ、もうわしもそう長くないからあれを出してくるか。少し待っててな。」  辺りを見渡しながら待っていた。文字をみる限りどうやら人間のDNAのようなものだ。つまり自分の能力をDNAのような物で抜き取り、その対価となる他の人の能力を入れるということか。 「やーい。たくさん持ってきたぞ。どれもこれもレア物だ。どうせお前が最後のわしの客になるだろうから、すべての能力をあげよう。」 「良いんですか...?こんなに...。」 「わしが良いと言ったら良いんじゃよ。さあ、ここに立て。」  僕はゆっくりとおじいさんの近くの魔法陣のような所に立った。すべて能力を貰うのは嬉しいんだが、副作用とかはないんだろうな。 「これから入れる能力を読み上げるぞー。」  僕がもらえる能力は、「状態異常耐性V」「水中移動V」「水中呼吸V」「物理耐性V」「魔法耐性V」「自己回復力V」「物理攻撃V」「特殊攻撃V」「結界無効」そして「剣術X(10)」らしい。 「なんで剣術だけ10も...?」 「最強の勇者の貴重なDNAじゃよ。お前ならこれらの能力を使ってどこまでも羽ばたけて行けるとわしはかける!」  そうだな、僕は自信だけはいっちょ前だ。後は力だ。これであいつらにもざまぁ出来るだけでなく、みんなから憧れの的に...!俺はこのおじいさんに最早一生を懸けられたような物だ! 「でも副作用とかは...」 「じゃあやるぞ!」 「え、ちょ...うおおおおおおおおおおお」  急に力がみなぎってくるような。不思議な感覚になった。これは栄養ドリンクをがぶ飲みするよりも効果がありそうだ。 「付与は終わったぞ。じゃあ、またな。」 「え?」  あまりに早く終わったものだから僕はびっくりしていた。これで僕は本当にさっきの効果が発揮されるのだろうか?まあ試してみるしかないな。 「ありがとう。また来るよ!」  手を振った後、路地から抜けて1人歩いていた。そういえば、もう料理能力は無くなって下手くそというか普通の料理センスになったのかなぁ。ステータスを見た。でも能力が無くなってはいなかった。 「あれ?おかしいな。ちょっとさっきのおじいさんに確認しないと...」 「ようやく見つけたぞ!お前を『無許可魔力付与罪』で逮捕する!違法営業もここまでだ!」  ええ...怪しいと思ってたけど、やっぱりあのおじいさん違法営業してたのかよ。となれば速く逃げないとな。あのおじいさんに会えなくなるのは悲しい。でも今は俺が捕まらないようにしないと... 「おい!そこのお前!ステータスを見せてみろ!」  ...俺の異世界人生は逮捕されてあっけなく終わるのか?前世では前科ゼロだったのに。転生先で前科が付くとかやめてくれよぉ...。  ―お前ならどこまでも羽ばたけて行けるとわしはかける!  そうだ。俺の力でどうにか避けるんだ!そうしないと俺の色々な目的が果たせない!俺はあのおじいさんに最早一生を懸けられているんだから...!俺は勇気を振り絞ってやっとの思いで答えた。 「い...一体なんの用でしょうか?」
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