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第8話 王様と魔王幹部
「よくあの魔王を倒してくれたじゃないかー!しかもあんなあっさりと。」
「は...はあ。」
俺は王宮に褒められに行かせられたのか...王様が大絶賛していた。どうやら魔王は本当にそう簡単に倒せない敵らしい。まあそれはそうだろうな。後はそれを私が王の時によくやってくれたと言っていた。
俺は紅茶を飲みながら雑談をしていた。1時間位経っていた。体感では3時間位話したつもりだったが...
「...と、まあ前ふりはここまでにしておいて...」
今までの1時間は全て前ふりだったのかよ。本当に色々とよくわからない。でも本題に入るのだから真剣に聞くようにするか。
「お前は逆パターンで魔王とその幹部を攻略しようとしている。まず最初に魔王を倒してしまったという珍しいパターンだ。」
魔王を倒したのは俺が初だと思うが...
「今度は我が国として幹部の討伐を頼もうとしている。どうだ?国の役に立てるのだぞ。お前にとっては準備体操程度かもしれないが、やってみないか?」
俺は今まで忘れていたけど、俺の冒険の目的はあいつらに「ざまぁ」をするという事しかないから。さっきの魔王討伐はたまたまであって特別な理由はないし、恨みとかも無かったし...
うん、断ろう。
「残念ですがお断りします。俺が冒険する理由は他にありますので。」
「え?ちょっとぉ、冗談は良いから...」
「じゃ、さようなら。」
「おーい!待ってくれぇ。」
「あ、紅茶は美味しかったですよ。」
俺の冒険の目的はあくまでもあいつらにざまぁしてやる事だから、あんな事は正直どうだって良い。でも俺の目的を止めようとしてくるなら容赦はしないけどな。
さあ、王宮の門の前まで来た。だが今そこで困っている。馬車が1台も止まっていないのだ。どうしようかと思ったが、そうだ、俺には創作魔法の能力がある。もし瞬間移動できるならすぐに戻れるのでは?
「...これで良いかな。」
俺は地面に2重の丸を描いた。そしてその真ん中に立ち、自分の意識をテリーが居る場所に移すように脳内想像をして、そこに体を行かせるように祈りながら手を一回叩いた。次の瞬間、一瞬で今自分が居る場所が変わった。
「すげぇ、本当にできちゃった。」
「あ!サトウ!大丈夫だったの!?」
「うん。軽く王と話してきたよ。雑談程度だけどね。」
「雑談程度であっても王と話せるとは...!すごいです!」
そこで尊敬されても困るんだよなぁ。さっき大仕事になりそうなのを1つ断ってきたし、王宮の土地に二重丸描いちゃったし。今思えば色々と迷惑をかけているな。まあ良いか、俺は既に勇者のような者だし。
「それでそのすごさを見込んで...お金を貸してください...」
そのために俺を尊敬させて少しでも調子に乗らせようとしたのかよ...まったく...俺はしばらく貸して貸してと言われたくなかったので、金貨10枚をあげた。
「返さなくていいから。その代わりもう貸してとか言うなよ。」
「...はぁい。」
俺は次の依頼を受けようと席を立った瞬間、いきなりキャーと言う大声がした。
「なんだ?なんかまたやばい奴が来てるのか!?」
俺、良いことないじゃん。今まで悪いことにしか見舞われてないような...しょうがないから外に出てみるか。と外に出たらなんかやばいことになっていたのだ。
「なんで魔王の幹部が7人全員居るのよ!」
もしかして俺を狙ってたりするのか?
「サトウと言うのはどこに居る?」
やっぱりだ。俺を殺す気なんだな。そう言って俺は手に力を込め始めた。いつ来ても対応できるように。やっぱり魔王をうかつに倒したのが良くなかったのか?
ここは被害を出さないためにも正直に前に出てこよう。
「俺がサトウだ。」
俺は魔王の幹部7人にジロジロ見られた後、幹部1人に言われた。
「...サトウ様。幹部一同、お迎えにあがりました。」
そう言って幹部たちは俺に向かって頭を下げた。
「は?え?...人違いではないでしょうか?」
なんで俺が魔王みたいになってるんだよ...!俺はそんな者になった覚えはないのに。
「失礼しました。ご説明いたします。私達魔王に仕える者のルールとして『魔王が死んだら魔王を死なせた者を次の魔王とする』というルールがあります。よってあなたが魔王となったのです。」
...どうやら魔王を殺した俺が次の魔王に自動的になったみたいだ。ていうかどういうルールだよ。他の世界にはなさそうな唯一無二のルールだな...
俺は状況をなかなか飲み込めずに居たが、やっとの思いで質問してみた。そう、特典。ただ魔王になるのも面白くないからな。
「魔王になったら特典とかはあるんですか?」
「サトウ様、敬語は不要です。そう、魔王になると3つ特典がございます...」
そう言って話し始めた。まるでどこかの営業のような感じで。幹部が言っていた特典は主に先代の魔王たちの財産の100%相続、魔王の配下にあるものを自由に指示して動かすことが出来る、そして最後は「魔王専用能力」の付与である。
「じゃあ、『魔王専用能力』ってなんだ?」
「具体的には、『下級攻撃無効』、『闇攻撃威力上昇』、『状態異常無効』が大きな目玉でございます。」
俺はよくよく考えてみた。「下級攻撃」って言うのは自分よりも弱いやつの攻撃ってことだよな。それが「無効」となる...いわば勇者より強くないと倒せない。
次の「闇攻撃威力上昇」は中二病専用能力かな?俺が中二病モードになればかなり強いって事か。
最後の「状態異常無効」は毒とかそういうのを全て効かなくするってわけか...待てよ?そうすると...
「俺、最強じゃん。うん、悪くないかも。」
次の瞬間、テリーが走ってこっちに来た。
「サトウ、悪い人になっちゃうの?」
いやいや、悪い人になるつもりは無い。俺は逆に魔王の立場を利用して役に立つことをしてやろうかと思っているんだけどな。色々やってみたいこともあるかもだし。
「安心して、俺は悪いやつになる気はないよ。君たち!俺の言うことを聞くと言ったな?」
「左様でございます。どんなことでもおっしゃってください。」
言ったな?悪いが俺は今後色々と振り回すかも知れないぞ...
「魔王、いや俺の城にテリーも住まわせていいかな?」
「え?私?」
「...はい、もちろんでございます。」
俺の要望はこれだけではないのだ。もう少し注文してみる事にした。
「一回俺のものになった城を見たいから案内してくれ。んで案内している間に綺麗に掃除をするようにしてくれ。」
「承知しました。」
流石魔王の部下。ものすごく忠実だ。そして俺は用意された真っ黒な馬車にテリーと共に乗り、他のみんなにこう声を掛けた。
「俺はー!魔王であるが勇者の血を引くものとして、いや、勇者でもあるんだぞ!少なくとも善良な人に危害は加えないから安心しとけ〜!俺だって信じられねぇんだよ!」
その言葉に国民はやや安心した表情をしていた。俺の言った「魔王になったことを信じられない」って言うのは事実だし。俺は馬車に乗り、ナトゥーラ王国を後にする。
「まあサトウが魔王なら良いかぁ...ふぁあ。」
もしかしたら馬車の乗り心地は王宮行きの馬車より良いかも知れない。理由としてテリーが怖がりもせずにあっさりと眠っているからだ。俺は馬車に揺られながら同席している幹部に質問をした。
「...そういえば能力っていつ付与されるの?」
「既に付与されていますよ。細かく言うと、あなたが魔王になることに同意した時点でですね。」
「早っ...ううん、仕事が早くてよろしい!」
「ありがたいお言葉です。」
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