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この際、私が本当にブスで醜いかどうかは別にして『ブス』と言われてしまうのには原因が何かあるのではないか、と思えた。
実際、野球部員たちが降りて来たのは階段の端ではあったものの、私は彼らの通行を妨げていた事に変わりはない。
ニッコリ笑って道を譲るべきだったのかもしれないが、私は『ブス」と言われたショックで固まって動けなくなり石仏のようになっていた。
もしかしたら、道を譲らない性格ブスを罵る言葉だったのかもしれない。
だけど彼は違った。
彼もやはり野球部員たちの心ない言葉を聞いていたのだと思う。
私の氷ついた顔を見て言ったのだから。
「君は可愛いよ」
彼はある日グラウンドで全校集会があった時に、すぐ近くの列に立っていた。
イヤな予感がしていたものの、その彼の前には天敵野球部員の一人が立っていて、やっぱり私をからかい始めた。
「ブス!」
名前も知らない隣りのクラスの男の子。
どうしても私の顔を見たらブスと言いたくなるみたい。
「やめろよ!」
私を可愛いと言った男の子は、ブスと罵る男の子を諌め始めた。
「うっせー、ブスにブスって言って何が悪ぃんだよ」
「けど女の子は皆んな可愛いよ」
「何だてめぇ」
「可愛いからってイジメたくなるの?」
「ケンカ売ってんのか、コラァ」
「いや、君にとってブスでも俺にとってはブスじゃないし」
「カッコつけてんじゃねぇよ」
「だって、女の子は皆んな可愛いよ」
この発言の真意について私はよくわからない。
とにかくこの私にとってヒーローみたいな男の子は頭一つ体の大きな男の子相手に、私を擁護してくれている事は確かで。
なおかつ、私は彼が隣りのクラスだった事をこの時初めて知った。
彼の名前は……
知らない。
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