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好きって事はキラキラしてる
自転車置き場に停めておいた愛車に鍵を挿す。
ガシャンと音がしてロックが外れると、スタンドを上げて私は自転車に跨った。
こちらを男子二人が見ている。
「ねぇ、俺と付き合わない?」
これは『ブス』と言ってくるセリフと同様、あまり意味はない。
おはようの挨拶みたいに、そんな事を言ってくる。
短いスカートから脚が出ているのは自分の責任。
でも、それを眺めて男子がニヤニヤしているのは、私のせいではない。
女子高生の生活って、こういうものなのだろうか。
なんだか常に男子の視線に晒されていた。
私を『ブス』だと言っていた人種が手のひらを変えてくる。
180度転換。
なんだか、身の危険を感じる毎日。
信号待ちをして歩道に止まっていると、知らない男の人が近付いて来た。
顔を覗き込んで唐突に言う。
「可愛いね!」
そのままその人は通り過ぎて行った。
女子高生の制服マジックなのかどうかわからないけれど、街中で無闇に知らない人から「可愛いね」と声を掛けられるようになった。
すると、私にはある変化が現れ始める。
私って、もしかして可愛いのかな?!
いや、可愛いくない。
整形もメイクもしていない。
私が段々可愛くなったのではなく、相手にとって私が可愛く見えるようになったのだ。
私はそう捉えた。
美醜の感覚も、見る相手側の価値観や精神状態によって評価が変わる。
いちいち相手の評価に一喜一憂していては、身がもたない。
世界が可愛いもので溢れていると思える人間は幸せだ。
私は鏡を覗いてみた。
白雪姫をいじめる継母は、己の姿を見て世界で一番美しいのは自分だと思っていたのに、ある日魔法の鏡に問い尋ねると「世界で一番美しいのは白雪姫だ」と答えた。
鏡の言う事を絶対だと思っていた継母は白雪姫を殺したい程、憎み始める。
だけど、ちょっと待って。
鏡の言う事って、絶対なの?!
だから、私の基準は目の前にある鏡じゃない。
私の基準は……。
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