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「きょうはなにをつくりますか?」
「昨日食材を買ってきたから、それでハンバーグを作ってください。食材は冷蔵庫の中に」
「わかりました」
春姫が歩き始めると、同じ歩調で「ねこ」も歩く。その姿は、まるで飼い主の後ろをついていくペットみたいだと思った。
玄関から五歩、冷蔵庫の目の前に立った。「ねこ」が指をさす。
「れいぞうこ、あけていいですか?」
「どうぞ」
冷蔵庫の扉を開き、「ねこ」が首を動かして中に入っているものを確認していく。
「ひきにく、たまねぎ、ぎゅうにゅう、たまご、けちゃっぷ。はい、だいじょうぶです。はんばーぐ、つくれます」
一度扉を閉めた「ねこ」が、こちらを向いて言った。
「ほかにりくえすとはありますか?」
「いえ、特に。あ、でも、スープとかあると嬉しいかも」
「わかりました。れいぞうこのなかのものや、きっちんのものを、じゆうにつかっていいですか?」
「もちろんです」
春姫が答えると、「ねこ」がこくんと頷いた。
「では、ちょうみりょうとちょうりきぐのばしょをおしえてください。あと、ごはんもたいてください。はんばーぐは、42ふんごにできあがります。それまでおまちください」
春姫は「ねこ」にフライパンとボウルが入っている棚を教え、調味料はコンロの脇に並べた。炊飯器をセットしてからこたつに潜り込む。
水音が聞こえる。野菜を洗っているのだろうか。やがて、包丁がまな板に当たる軽快な音が聞こえてきた。きっと玉ねぎをみじん切りしているのだと思う。
大学卒業後、就職を機に引っ越してきたこの部屋に、親以外の誰かが入ったのは初めてだった。
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