3 ごはんねこ

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 ケチャップとソースが混ざったような甘酸っぱい匂いが漂ってきて、春姫は目を開けた。いつの間にかこたつでうたた寝していたようだ。 「できましたよ」  「ねこ」の声に導かれ、キッチンスペースに顔を出すと、ワークトップに料理が並べられていた。まず目に入ってきたのはメインのハンバーグだ。先ほど感じた匂いは、ハンバーグにかかっているデミグラスソースのものだろう。付け合わせに、ほうれん草とコーンのバター炒めが乗っている。いつか使おうと思って冷凍庫に入れていたものだ。スープカップには、コンソメスープが入っている。こちらも冷凍のミックスベジタブルと、ベーコンが浮いている。お茶碗には炊き立てのご飯が盛り付けられ、ほかほかと湯気が上がっていた。 「わあ、すごい。お店みたい」  春姫が拍手すると、「ねこ」はわずかに姿勢を正した。 「ねこはごはんをつくるのがおしごとなので」  春姫には、得意げに胸を張っているように見えた。それから「ねこ」が何も言わなくなり、その場に立ったまま動かないので、春姫はためらいがちに尋ねた。 「えーと、運んではくれないの?」 「はい。『ごはんねこ』はごはんをつくるねこなので。『はいぜんねこ』ではないので」 「配膳専門のロボットって、店では役に立つかもしれないけど、家庭では需要ないよ」 「ねこはろぼっとではありません」  「ねこ」が早口で答えた。春姫が頭を抱える。 「分かった分かった……。自分で運ぶよ」
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