27人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃあ俺、店の人に挨拶してくるから、それ積んだら『ねこ』と待ってて」
「分かりました」
パイプ椅子をトランクに積んだ春姫は、「ねこ」と一緒に後部座席に乗り込んだ。いつもは助手席に座るのだが、なんとなく「ねこ」の隣にいたい気分だったのだ。
ため息をついた。息抜きに少しゲームでもしようと鞄からスマートフォンを出そうとした時、無機質な声が隣から聞こえてきた。
「やなぎさわさん、きょうもおつかれのごようすですね。いきていればそんなひもございます」
そういえば今日は「なぐさめねこ」だった。慰めるには相手が必要だが、お客様に話しかけられなかったため、「ねこ」はほとんど喋っていなかったのだ。
「おきをおとされませんよう。たくさんおいしいものをめしあがって、たくさんねて、えいきをやしなってください。あすはきっといいひになることでしょう」
いつもよりも尊敬語が多めだ。丁寧語だけで慰められては、馴れ馴れしい感じがして嫌がる人がいるのかもしれない。でも春姫は、その丁寧すぎる感じがかえって馬鹿にされている感じがした。
「タメ口で喋って」
前を向いたまま言うと、「ねこ」が「わかった、おっけー」と答えた。驚いて勢いよく「ねこ」をの方を向いてしまった。首を素早く動かしてしまったせいで、ポキっと鳴った。
最初のコメントを投稿しよう!