10 なぐさめねこ

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 何と返事しようか考えているうちに青信号になった。車が進む。夏木が左手を後頭部に当てた。 「あー、説教臭くなって悪い。俺が言いたいのは、いろいろ気にすんなってこと。春姫ちゃんが卑下することない。実際、かなり役に立ってるよ。会場セッティングだって、呼び込みだって、ちゃんとしてる。契約だって取れてるよ」  夏木の首筋が赤かった。照れているのかもしれない。春姫もつられて恥ずかしくなる。 「ありがとうございます」  小声でお礼を言った。 「変な奴が来たらすぐに俺を呼べよ? 文句言いたいおっさんとかおばさんとかは、弱い人には強くいけるけど、スーツ着てる男が近づくだけで黙るからな。盾として使ってよ」  夏木の耳が赤く染まっているのを見て、春姫はくすりと笑った。 「頼りにしてます」 「おうよ」  夏木が左手の親指を立てた。
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