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振り返れば、そこにいたのは青い制服の見知った男性。
ビニールに包まれた段ボールを抱えた彼は、いつもの活発な笑顔を封印して心配そうに私を見下ろしている。
「か、がわ……さん?」
驚きのあまり大きく開いた瞳から、大粒の涙がハラリと頬を伝う。
「……その子、体調悪いの?」
「っ、は、はい……」
「えっと……弟さん?」
「はい、今から、病院に行こうとしてて……」
頷くと少し安心したように息を吐いた香川さん。次の瞬間、私に自分の傘を渡して、嵐の前にしゃがみ込んだ。
「大丈夫かー?今から兄ちゃんが病院連れて行ってやるからなー?」
「……えっ?!」
「車、ないんでしょ?俺の車で行こう」
「そ、そんな……悪いです!」
反射的に遠慮すれば、嵐の頭を撫でながら呆れたようにこちらを見上げ「歩いて行こうとしてたの?この子背負って」と首を傾げられる。
「……それは、」
「女の子がこんな雨の中子ども背負ってとか……無謀すぎ。これからもっと雨強くなる予報だよ?」
「……」
すべてがおっしゃるとおり。何も言い返せず俯くと、ふっという笑い声がその場の緊張を解いた。
「よし、じゃあ決まり。頼れるもんは頼っときな!」
「……はい。ありがとうございます」
立ち上がって私の顔を覗き込む香川さんのいつもの明るい笑顔に、胸がじわっと熱くなる。同時、涙も滲んで、ポロポロと流れる涙が頬を濡らした。
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