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「夕香ちゃん、注文してたケーキどんな感じ?」
「バッチリ用意してるよ〜。冷蔵庫の中入ってるでしょ?」
「お、本当だ!可愛い〜!さすが夕香ちゃん!」
「でしょ〜?」
業務用冷蔵庫を覗き込めば、可愛くデコレーションされた6号ケーキ。嵐の好きなくまさんのお人形を乗せた特注品だ。
「嵐、喜ぶよー」
「嵐の好きな桃も入れてあるからね」
「ありがとう〜!」
「私は明日の仕込みがあって誕生会行けないけど、また今度プレゼント持って行くから、一緒に外食でもしようね?」
「やったー楽しみにしてる!」
今日は嵐の4歳の誕生日。夕香ちゃんに頼んでいた可愛いケーキを写真に収めつつ、「嵐、この間、ハンバーグ食べたいって言ってた」と早速外食先のリクエストをすると、「本当、あんたの中心は嵐で回ってるわよね」と笑われた。
「そりゃそうだよ!私は自分のこと嵐が幸せに暮らすために産まれてきた使者だと思ってるから!」
「ふふ、本当にブラコンなんだから。せっかくの大学生活なのに彼氏も作っていられないわね」
呆れたように言う夕香ちゃんにムッと顔を顰め、「そんなのいらないもーん」といじけた声を上げながら顔を背けた。
そりゃあ、憧れがないわけではない。
好きな人がー、彼氏がー、って。小さなことで喜んで、悩んで、キャッキャとはしゃいでいる友人を見れば、羨ましいと思うこともある。
私だって恋愛をする余裕があったら……なんて、自分の環境を恨みそうになることもあるけれど……。
『ねーちゃん!』と、いつだって私に“大好き”って顔を向けてくる嵐を見れば、他の男からの“大好き”なんて要らないやって思えるんだ。
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