01.癒しのお兄さん

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夕香ちゃんとおしゃべりをしていれば店の入り口の方からカランコロンと音がする。 お客さんだと思い慌てて「いらっしゃいませ」と厨房から店内に顔を出せば、荷物を持った彼が「こんにちは、沢田急便です」と相変わらず爽やかな笑顔をこちらに向けていた。 入店したのが彼だと知った瞬間、ドキリと音を立てる心臓。 髪を整え、心ばかりの化粧を確認したいが、そんなことをすれば彼に気がある女だと思われてしまうのではないか……なんて、思考を巡らせている時点で自意識過剰。 「こんにちは。いつもありがとうございます」 「今日はこれだけです」 「あ、じゃあこのまま受け取りますね」 恐らくケーキとセットで渡しているろうそくの入った小包をカウンター越しに受け取りつつ、今日の癒しはこれで終了かぁ、なんて残念に思いながら受け取り確認のサインをしていると…… 「あの……」 「え?」 突然声をかけられて、思わず聞き返してしまう。 キョトンと丸い目を彼に向けて固まる私に普段通り爽やかな彼は「今日ってお仕事何時ごろに終わりますか?」なんて、今までにない質問を投げかける。 「へ……あ、えっと、15時には」 「そうなんですね。じゃあそのくらいの時間にまた来ます」 「……え」 「じゃ、サインありがとうございます。また後ほど!」 「……」 ペコリと礼儀正しく頭を下げて去っていくブルーの背中。ぽけっと見つめていれば、わざわざ厨房から出てきた夕香ちゃんに肩を組まれた。
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