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プロローグ
『俺と、付き合ってください!!!』
学校の校舎裏に響く叫び声――。
生徒や先生の視線と、夏の日差しから隠れるように木々の下で頭を下げる男子生徒と、あまりの声の大きさに驚いきながら視線を泳がせている私。
「ごめんなさい。私は誰とも付き合う気はないの」
その言葉を聞いてもなお頭を下げたまま、全身を震わせてる男子生徒の頭には、木々から「諦めなさい」というかのような葉っぱが1枚乗った。
私はそんな男子生徒に対して、振り返ることもせずにそのまま立ち去る。
ほとんど話したことない人にいきなり言われても困るのだけれど……。
「無理だとわかっていながら、何故それでも進もうと思うの……?」
私は、七瀬水希。
都市の高校に通う生徒であり、学園ではかなりの有名人となっている。
有名な理由は簡単だ。"容姿が良い"ということ。女子生徒の間でも私は人気者で、勉強を教えたり、相談に乗ってくれるということで他人受けが良い。
本当に同じ制服着ているのかと言われることがあるほどに、私は大人っぽい印象で、髪の毛は一見黒髪ではある。しかし、腰まで届くような背中で舞う髪の毛は、太陽の光が当たれば茶色い姿も見せるため完全に黒ではない。
背も高めだが、長い足はスカートで隠され、その歩幅で踏み出せば膝が顔を覗かせる。
美人高校生と言われることが多い。
「席替え……か……」
一方で、賑やかな教室にて席に座ったまま時計の針を見つめるのが上条智輝だ。
髪の毛は茶色で、私と違って短い髪の毛だけど、柔らかな印象で清潔感がある。背は上から数えた方が早くて、教室や廊下を歩けば他の人達が二度見したりする。
"変"、ということではなくて、人気ということだ。彼も容姿は凄く良い。私は特に気にすることはないけれど、彼は女子生徒から告白を受けたりすることが少なくない。
『上条君の隣にならないかな〜』
『それっ!なりたいよね!』
高校2年生の夏――。
太陽照らす外の暑さとは異なった熱気が、教室のに広がるのだった。
"席替え"だから。クラスには女子生徒人気の上条君がいて、私は男子生徒から熱い視線を向けられる。そんな中での席替えとなれば、「隣になりたい」というわくわく感や、友達と近くになりたいという思惑が溢れ出てしまうのは仕方ないことなのかもしれない。
『おーい、席につけよ。席替えだ』
昼休みが終わり、チャイムの音が教室に響くと先生が生徒達の熱気を抑えようと言葉を被せる。
でもそれだけでは冷めない灼熱の教室。
「よろしく」
「あ、よろしく」
嫌な視線と好奇心の目が私の全身に突き刺さる。彼だってそうだろう。
『あそこの席やばくね??』
『クラスのみならず、学年で断トツのイケメンと美女が隣だと……』
何故なら、私の隣になったのが大人気のイケメンなんだから……。
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