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それからほとんど毎日のように、私と葵は何かあれば言い争う関係だ。周りからは「またやってるよ」と言われながらも、どちらも諦めることない争いが起きてしまう。
「仲良さそうだね」
「いや、何処が?ほっとうに噛み合わなくて困ってるよ」
「でもさ、なんか楽しそうに見えるけどなぁ」
昼休みに葵が私を見てニヤニヤと言う表情を見せる。たまに上条の方へ視線を向けることもあれば、目の前に広がった弁当に向き合ったり、私を詮索するかのような視線を向けてくる。
「楽しくないよ。疲れるもの」
「疲れているようには見えないよ」
「隠しているだけーー」
葵の頬を人差し指で押して凹ませる。
「で、彼とはどうなの?葵は」
「ん?どうもこうも、普通……かな?今度の土曜にデートだし?」
「なんで疑問形なの」
「水希と違って、言い争わないし。私の意見を素直に来てくれるよ?」
私にはわからないことだ。
言い争うことがないことも、それはそれでと思ってしまう私は何かが狂ってきているのかもしれない。
「相性診断って……、本当なのかも……」
という私に対して罰を与えるように……、日常は侵攻して行く。
「文化祭が近いので、クラスから文化祭実行委員を二人選出することになった」
教室の中に冷たい空気が生まれ始める。
文化祭というと聞こえは良いが、実行委員となれば色々と縛られたりすることがあるため、誰もやろうとは思わない。
私だってそうだ。できることなら実行委員を避けて文化祭を楽しみたい。
「誰か立候補は?」
その言葉を聞いたあとの静けさからすれば一目瞭然。誰も手を挙げようとしない。
同時に、私の心では嫌な予感というのも生まれ始めてきた。
「じゃあ、席替えのときに使ったくじあるから、くじ引きな。文句なしだぞ」
そう言って先生は紙の入ったティッシュ箱に指を入れてガサガサと漁る。そして二枚の折りたたまれた紙を取り出すと、その内容を黒板に書き記す。
「まずは、七瀬水希。あとは上条だな」
予感はこういう時に限って的中率が高い。
百歩譲って実行委員になることはいい。でも隣のあいつと一緒なんて、うまくやれる自信はない。対して滅茶苦茶になるのが結果として見えている。
「面白くなってきたね。良かったじゃん」
「どこが?」
そんな会話をしながら、「文句なし」であるため実行委員を務めることとなるのだが……。
「男子意見が多いのはメイド喫茶や模擬店みたいなのがあるね」
「食品扱うの?結構大変だからやめたほうが良いと思う。反対。レクリエーション要素の方向性が良いと思う」
「せっかくなんだからやってみようよ」
「反対!!現に模擬店の意見は少数でしょ?」
結局、争いは起きてしまう。
意見を纏めたとしても、私と彼の間で対立が起こってしまうのは目に見えたこと。
「でも、バラバラが多いから纏まらないよ!!」
「そこを、今度多数決取るなりして決めればいいでしょ」
「早く決めて書類出さないとできるできないに関わる!!」
そんな争いをしながら、時は過ぎて行く。
進まなくても、進めなければならいというのはかなり辛いことだ。
「なんだか、楽しそうだねぇ」
一方で、葵は言い争う私達を見て笑っていた。
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